受け身の仕事から、
“狙って”つくる経営へ。
好きなことを本業に変えるために必要だったのは、派手な施策ではなく「数字」と「言語化」でした。徳島の小さな町で、フードフォトグラファー兼・木工作家として活動する近藤奈央さんに伺いました。
“狙って”達成
選ばれる状態へ
継続・延長するお客さん
「やるほど楽」に
徳島県在住。フードフォトグラファー/木工作家。地元の杉を使った曲げわっぱのお弁当箱を制作・販売しながら、料理写真の撮影や写真講座も行う。好きなことを仕事にしてきた一方で、経営としての見通しに課題を感じていた。
新規事業を軌道に乗せたい人へのマンツーマン起業家育成支援と、起業を自己表現として楽しむためのプロダクト開発を行う。本インタビューの聞き手。
目の前のことに振り回されるのではなく、自分でちゃんと数字を見られるようになった。— 近藤奈央さん
地元の杉の曲げわっぱと、料理写真。
好きなことから始まった仕事。
近藤奈央さんの仕事は、二つある。地元の杉を使った曲げわっぱのお弁当箱を制作・販売する木工作家としての顔。そして料理写真の撮影や写真講座を行うフードフォトグラファーとしての顔だ。
まず、近藤さんのお仕事について教えてもらえますか?
仕事は二つあって、一つは木工作家として、地元の杉でお弁当箱を作っています。曲げわっぱのお弁当箱で、町内の製材所さんに、適した木材を仕入れてもらっているんです。
もう一つは、フードフォトグラファー。料理写真を撮ったり、教えたりしています。
地元の杉なんですね。素材の木からこだわっているんだ。
そうですね。木のお弁当箱って、「手作りの木製品」とも「伝統工芸」とも見せられるし、自然素材だけなのでサステナブル、という切り口もあって。媒体によって、少しずつ見せ方を変えています。
最初のきっかけは何だったんですか?「こういうものがあったらいいな」と思ったんですか?
そうなんです。自分が「あったらいいな」と思うものが意外となくて。もともとは料理写真が先にあって、被写体としてお弁当箱を撮るのが好きだったんです。
それが、田舎に住んでいるうちに、「自分のところの杉で作れたら面白いな」と思うようになって。
なるほど。
最初は、職人さんに作ってもらって自分は販売だけしようと計画していたんです。でもビジネスのことも全然わかっていなくて、お願いしたら作ってもらえるものだと思っていたんですけど、「今の生産で手一杯です」と断られてしまって。
そのときに、「じゃあ、自分で作るか」と思ったのが始まりです。
思い切りが素敵ですね(笑)じゃあ、もともとは料理写真が先にあったんですね。
はい。10年ちょっと前、専業主婦のときにお弁当ブログをやっていて、料理写真が面白くて続けていたんです。震災をきっかけに徳島へ移住して、今は人口数千人の小さな町に住んでいます。
素晴らしいですね。趣味の発信がきっかけで、仕事になっていったわけだ。
当時からがくちょうのブログを読んでいて、「メルマガをやった方がいい」と書いてあったので始めたんです。そうしたら登録してくれる人が増えて。
「料理写真を教えてください」「商品の写真を撮ってください」と言われるようになって、少しずつ仕事になっていきました。


仕事は来ていた。でも「経営」に
なっている感覚はなかった。
好きなことを発信したり、自分が欲しいものを創ることで、仕事が生まれていく。近藤さんのスタートは、個人起業家にとって理想的にも見える流れだった。だが、仕事が来ることと、経営として安定していることは同じではない。
伴走コンサルティングを受ける前は、どんな状態だったんですか?
写真の仕事もコンスタントに来ていたし、木工も作れば売れる状態でした。でも、利益率みたいな数字は「わかりません」というスタンスで。
売上も微増はしていたんです。でも「今年はこのくらいにしたい」「この商品を売るために逆算してここを頑張る」ということは、まったくしていなくて。ずっと起業初期のノリでした。
最初はそれでいいんですよね。好きなことを発信して、反応があって、仕事になる。そこまでは勢いや楽しさで進んでいい。副業で月に5万円稼ぎたいなら、ずっとそのままでいいくらいです。でも、本業にするとなると、少し話が変わってくる。
そうですね。周りからは「フードフォトグラファーで、お弁当箱も作っていて個性的だね」と言われていて、ポジションはわかりやすかったと思います。
でも、安定性とか見通しという意味では、経営ではなかったなと思います。
「好きなことはできているけれど、経営としては成立しきっていない」という感覚だったんですね。
そうなんです。思った通りに稼げない、お金が残らない、という問題はありました。でも心のどこかで「好きなことを仕事にできているから幸せじゃん」と思っていて。
それが言い訳というか、見ないようにしていた部分があったと思います。
なるほど。
お願いされた仕事、来た仕事をやる。その繰り返しになっているのが、ちょっと違うのかなと。写真も木工も量は増やせないので、質と単価を上げるしかない。でも、そこからどうすればいいのかがわからなかったんです。
お願いされた仕事、来た仕事をやる。その繰り返しになっているのが、ちょっと違うのかなと思っていました。— 近藤奈央さん
出産を前に、時間でカバーする
働き方を、続けられないと感じた。
働き方を見直す大きなきっかけは、出産だった。依頼が来たら遠方まで撮影に行く。呼ばれたら泊まりでも行く。時間と移動でカバーする働き方を、これからも続けられるとは思えなくなった。
伴走コンサルティングを受けようと思ったきっかけは何だったんですか?
子どもが生まれる直前くらいの時期でした。それまでは、写真も来るし木工も売れるし、だましだましやっていたんです。
でも妊娠して、改めて冷静に考えて。これまでみたいに時間でカバーする、呼ばれたらどこでも泊まりでも行く、という働き方はできなくなるぞと思いました。
子どもが小さいと、そういう働き方は難しいですよね。
はい。しかも私は、人口数千人規模の小さな町に住んでいます。ここにいながら、どうにかしなきゃいけないと思いました。
もともと、がくちょうのオンラインサロンには入っていて、楽しくビジネスができている感覚はありました。でも、出産を意識し始めたら、もう少し横でお尻を叩いてもらわないと駄目だなと思って。
苦手なことから逃げていたツケが来た、というタイミングだったんですね。
そうですね。仕事自体は楽しいし、続ける気持ちはありました。だからこそ、数字とか経営とか、苦手なことから逃げていたんだと思います。
仕事が楽しいからこそ、数字や経営という「苦手」から逃げていたツケが来たタイミングだった。
KPI・KGIで、お客さんの気持ちと
売上の因果関係を分解した。
伴走で取り組んだのは、派手な施策を増やすことではない。むしろ、売上が生まれるまでの流れを一つずつ分解すること。お客さんの気持ちと数字の両方から、見直していった。
伴走が始まってから、どう変わっていきましたか?
毎月の面談は、自分の中ではかなり緊張感を持って臨んでいました。今までは、どこか受け身だったんです。仕事が来るのを待つ、発信はするけど見つけてもらうのを待つ。
「自分が楽しくやっていたら、そのうち仕事が来るだろう」という成功体験もあって。それも大事だとは思うんですけど、それだけでは安定しない。
「頑張った」「発信した」「仕事が来た」という結果はあっても、どこから来たのか、なぜ来たのかという因果関係が見えにくかったんですよね。
そうです。だからがくちょうに言われたKPIとKGI(経営数字)を冷静に見て、どの数字にコミットしないと次につながらないのかを、自分に叩き込んでいきました。
お客さんの気持ちと、私が提供できる価値を、一個一個合致させていく感覚で。最初は飲み込みが遅いので時間はかかりましたけど、お客さんの気持ちを追っていくと、数字もちゃんと見えるようになってきたんです。
一度に全部やろうとしないことは大事ですね。集客から販売までの流れには修正ポイントがいくつもある。でも全部を同時に直そうとすると、何が効いたのかわからなくなる。
だから上から順に、ブログで落ちているのか、無料オファーなのか、セミナーへの導線なのか、一つずつ確認していく。
そうですね。「今月はこれだな」と集中できるようになって、やるべきことが散らばらなくなったのが良かったです。
それまで草野球の独学フォームでやってきたものを、ちゃんと「プロとして通用するフォーム」に調整していく感じでした。
草野球の独学フォームを、ちゃんと「プロとして通用するフォーム」に調整していく感じでした。— 近藤奈央さん
単価を上げても選ばれる。LTVが伸び、
好きなお客さんと長く関わる形へ。
数字と導線を見直した結果、事業には大きな変化が生まれた。月商100万円という本業の最低ラインを狙って達成できるようになり、サービス単価もアップ。お客さんが自分の意思で継続・延長してくれるようになり、LTVも向上した。
今は、月商100万円という本業の最低ラインを、狙って達成できるようになってきましたよね。
そうですね。多少のぶれはありますけど、狙って達成できるようになりました。目の前の現象に振り回されるのではなく、自分でちゃんと数字を見られるようになったと思います。
ジタバタ動き回ることも減ったんじゃないですか?
商品数をむやみに増やすことはなくなりました。新しいことをやるにしても、それが導線のどこに組み込まれるのかを考えるようになって。今、自分が何を動かそうとしているのかを、俯瞰して見られるようになった感じがあります。
かなりスマートな経営に変わってきましたよね。
サービス単価はめちゃくちゃ上げたんです。単価を上げるときは、やっぱり恐怖心がありました。でも出してみたら、ちゃんと欲しくて買ってくれる人がいて。自分の意思で延長してくれる人もいました。お客さんと長く、お互い好きな状態でつながれるようになったのが、すごく良かったです。
売り切り型から、伴走型・継続型に変わっていきましたよね。自社商品が高単価で売れるようになって、時間や利益率にも変化はありましたか?
自由時間も増えたし、利益率も伸びました。やればやるほど楽、という感覚があります。
単価を上げても、ちゃんと欲しくて買ってくれる人がいる。やればやるほど楽、という感覚があります。— 近藤奈央さん
AIだけでは直せなかった「自分の
悪い癖」を、人との伴走で修正できた。
近藤さんは、AIを使った壁打ちや言語化にも価値を感じている。一方で、事業の根本的な「フォーム=動き方や習慣」を修正するには、人との伴走が必要だったと話す。
伴走してもらって良かったと感じるのは、どんなところですか?
例えばスポーツでも自分のフォームって、鏡を見たり、ビデオを撮ったりしないとわからないじゃないですか。今ってAIにも相談したり、アドバイスもらったりできる部分もあると思うんです。
でも仕事って、生身の人とコミュニケーションして、目の前の人の心を動かしていくこと。だから、それなりのスキルと視点を持った人と話さないと、本当の意味でのフォーム修正はできないなと思いました。
そこは、AIだけだと難しいところかもしれないですね。
AIだと、こちらの話に合わせてくれますよね。でも根本的に「それどうなの?」とは言ってこない。がくちょうは「それは違うよ」と、何回も言ってくれる。そこがすごく大きかったです。
僕らのセッションでは、言葉だけを扱っているわけじゃないんですよね。言語は情報の一部で、背景や表情、どういう気持ちで話しているのかも含めて見ている。近藤さんとの関係性なら、ここまで言っても受け取ってもらえる、という信頼関係がある。だからこそ、踏み込んだフィードバックができる。
そうですね。経営方針って、ほとんど人生方針に近いじゃないですか。だから、正解だけを教わるより、ビジョンが一緒であることが大事なんだと思います。
経営方針って、ほとんど人生方針に近い。だから正解だけを教わるより、ビジョンが一緒であることが大事なんだと思います。— 近藤奈央さん
自分のウェルビーイングが明確になると、
仕事も発信も、説明できるようになった。
変化は、売上や単価だけではない。なぜ写真を教えるのか。なぜそのお客さんと関わりたいのか。自分自身の軸が明確になったことで、仕事や発信にも筋が通るようになった。
ウェルビーイングを再確認したことは、仕事にも影響していますか?
すごく影響しています。再確認したら、仕事や教えることに対して、すごく体系化できるというか、筋が通るようになりました。「なんでそれが好きなの?」と聞かれたときに、説明できるようになったんです。それがすごく面白いなと思います。
自分が何をなぜやっているのかがわかると、コンテンツにもなりますよね。
そうなんです。発信も変わりました。以前は書いているうちに「何が言いたかったんだっけ」となることがあって。でも今は、骨子、ぶれないところを捉えられるようになったので、そこに自分で加筆していく感じです。
これからの個人起業家にとっては、ノウハウだけじゃなく、自分の意思を出していくことが大事になっていく。ノウハウはAIでも出せるようになる。だからこそ「自分は何を大事にしているのか」を言葉にすることが、選ばれる理由になっていきます。
本当にそう思います。アウトプットしていないと、自分の中では完結しているつもりでも、人には途中を飛ばして出してしまう。だから、言葉にして出し続けることは大事だなと思います。
アウトプットし続けることで、感覚だったものが「説明できる価値」に変わる。それが、そのまま事業のコンテンツになっていく。
好きなことを“本業”にしたい、
個人起業家へ。
好きなことを発信し、仕事につながる。それは大切な起業の入り口だ。でも本業として続けていくには、数字を見ること、導線を整えること、お客さんの気持ちを理解すること、そして自分の価値観を言葉にすることが必要になる。
近藤さんは、受け身で仕事を受ける状態から、狙って売上をつくる経営へと変わっていった。それは、ただ価格を上げたから生まれた成果ではない。お客さんの気持ちと、自分が提供できる価値を一つずつ結び直し、長く関われるサービス設計へ変えていったからこそ生まれた変化だ。
最後に、伴走を受けて一番大きく変わったと感じることは何ですか?
目の前のことに振り回されるのではなく、自分でちゃんと事業を見られるようになったことだと思います。
単価を上げても、ちゃんと欲しくて買ってくれる人がいる。お客さんが自分の意思で延長してくれる。お互い好きな状態で、長くつながれる。そういう形にできたのが、本当に良かったです。これからもよろしくお願いします。
受け身の仕事から、
“狙って”つくる経営へ。
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